瀕死のカナリア

汚染された空気の中、窒息しそうなカナリアの、切れ切れの歌が聞こえる。

妄想だらけのあんたへ

「まだ愛してる」なんて囁けば

あたしの気持ちがどうにかなるなんて

とんでもない勘違いよ

 

さよならしたのはいつだったかしら

あたしはもうそんなことも覚えていないのに

あんたはまだ昔に戻れると思ってるのね

昔の良かったことだけを拾い集めて

あれほどあたしを傷つけたことも

あれほど周りに迷惑をかけたことも

何もかも悪いことはどっかに置いてきて

「まだ愛してる」ですって

 

あんたはいつもそう

都合の悪いことは

みんななかったことにして

妄想の過去で甘い未来を描くばかり

 

自分のこれまでとちゃんと向かい合うこともせず

「昔は良かった」という男が

うじゃうじゃそこらに溢れてる

そうね みんなあんたと同じね

 

反省のない男

自分を見つめようとしない男

都合の良い妄想だけで生きている男

世の中を悪くしているのは

そんな男たち

ほら、もう戦争の匂いが漂っている

どこに過去の反省があるの

 

そんなバカな男たちに振り回されるのは願い下げ

男心をくすぐって甘い妄想を描かせるだけの

嘘に飾られた演歌じゃあるまいし

女は過去をでっちあげたりしないのよ

もっといい未来を作り出すために

過去の過ちをしっかりと見つめ

絶対に繰り返さない

 

そうよ

あたしはもう新しい命を生きているの

あんたなんかにつきまとわれたくないの

 

バイバイ

早く大人になりなさい

二度と昔を呼び戻さないで

二度と過去を繰り返さないで

今からでも遅くないわ

妄想の美しい過去を捨てなさい

過去の自分を洗いざらい見つめて

徹底的に反省して

跪いて泣きなさい